最後に、廃止となった線路に沿って渋谷駅に戻ります。


まだ架線も貼られ、今にも列車が走ってきそうです。
むしろ列車がもう走ることがないという現実を
受け止めることのほうが困難です。
列車が走ってこないこと以外は、
何ら今までと変わらない朝が始まりました。


役目を終えた高架を感慨深く眺めながら、渋谷駅に到着。
ホームには明かりが灯もり、尚のこと廃止されたことを感じさせません。


しかし正面口に回ると、現実を受け止めざるを得ない光景が広がっていました。
改札口はフェンスで固く閉ざされ、その向こうの広大なホームには
人の気配は一切ありません。
ホーム自体の姿はそのままながらも、人がいない渋谷駅のホームは
温もりもなく、まるで魂を失ってしまったように感じられました。


この一晩の「時代の変わり目」に立ち会えたことを
私はいつまでも忘れることはないことでしょう。
東横線のこれからの新しい時代に心から期待するとともに、
85年間、時代を支え、世の中の流れを見守り続けてきた東横線渋谷駅の
終焉に深い感謝と惜別の意を表したいと思います。

-おしまい-